世界でもっとも成功した企業の流通戦略は、20年以上の厚みあるものだった。そして、それをひと繋ぎに書く長い目もまた厚く、貴重なものだ。

Nobiこと林信行さんがアップルの流通改革について雑誌『広告』に寄稿した文章 …

眠るシロクマ

テックとガジェットとインターネットをテーマにした「fragment(フラグメント)」というポッドキャストをやっている。名前はなんとなくテックの言葉からと思い、デフラグが浮かんでそこから。中身は本当にただの雑談。それがインターネット越しに漏れ聞こえてしまっている、というスタイルでいいと思ってる。

私が長く聴いているポッドキャストのひとつに、ソフトウェ …

2007年1月、米国サンフランシスコで行なわれた「iPhone」というスマートフォンの歴史的な発表。当時の私はそことはほど遠い、日本の田舎町にいた。

そして今月、また歴史的な発表イベントの場を逃した。東京は表参道で行なわれた、「SIGMA fp」というカメラの発表だ。場を設けたのはカメラメーカーのなかでももっとも尖ったメーカーと言っていいだろう、シグマ。

シグマがfpで掲げたのは「デジタルカメラの脱構築」。スマートフォン、レンズ交換式カメラ、シネカメラ、それぞれの世界で進化が進んでいる。一方で、それ故にカテゴリーの世界の枠でしか進化ができない。それらの進化の方向はユーザーから離れているのではないか。発表会でプレゼンを行なったシグマの社長・山木さんはそう話した。

これらの要素を一旦解体して、あたらしい意味、あたらしいコンセプトのために、もう一度再構築する。つまり脱構築、ポジティブな意味での再構築、脱構築をめざしました

そして発表されたのが「SIGMA fp」。パスポートより小さな縦横のコンパクトなサイズに35mmフルサイズのセンサーを積んだ「ポケッタブル・フルフレーム」。静止画専用でも、動画専用でもなく、(厳密には切り替えスイッチがあるのだが)どちらにも境目のない「シームレス」。そして、ポケッタブルなボディを拡張し、多様な姿にかたちを変えることができる「スケーラブル」。fpはこの3つのコンセプトを持っている。

名称のfpは「fortissimo pianissimo」、とても強く、とても弱く演奏するという意味の音楽用語、その略語だ。コンセプトが際立つネーミング。エッジだがやりすぎな下品ではない。洗練されたブランド名だ。非常にエッジな映像表現とコーネリアスを採用したBGMのコンセプトビデオ(冒頭のもの)も文句のつけようがない。

そして極めつけは、fpの3D設計データのWeb公開。世界中のあらゆるメーカー(企業のみならずあらゆる"Maker"を指していると思われる)に多用なアクセサリーを設計可能にし、ユーザーに無限の可能性を提供する。似た構想をもつスマートフォンのケース市場が思い浮かぶが、fpのそれはカメラのハードウェアの拡張、さらにデジタルカメラの形態までも脱構築・再構築させる可能性を秘めている。

このあたりは、自らの身体をVRに通すことによって、本人とはまったくちがう、カスタマイズされたアバターへと再構築するVtuberの構造も思い浮かんだ。近年、そしてこの先は、固定、もしくは最長単位だと思われていた概念を、さらに小さな単位へ解体・分解、再構築してしまうできごとがいくつも起こっていくのかもしれない。

本筋から逸れた。

SIGMA fpが2019年もっともイノベーティブなプロダクトのひとつであることは間違いない。そしてシグマはいまもっともイノベーティブなカメラメーカーである。撮影スタイルや表現が大きく変わり、多様化していくなかで、デジタルカメラの本質的価値は何か、カメラメーカーである自らと業界、さらに世界に突きつけるシグマ。最高にエッジで革新的である。

もっとシグマのことが知りたくなった。足の裏から湧き上がってくるような期待が溢れてくる。

Kota Suzuki

編集者 / Editorial Designer / Podcaster at fragment / formerly EIC Gizmodo JP

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